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第三章・7

「今日は仕事が休みなんだ。よかったら、君に付き合おう。何かやってみたいことは、あるか?」 「え? いいんですか?」 「あまり激しいスポーツなどは、だめだ。まだ体がついて来ないだろうからね」  乗馬や狩猟などはNGだ、と雅貴は言う。 (そんな上流階級のスポーツは、やったことないけど)  つくづく、住む世界が違う、と藍は痛感した。  そこで、一番やってみたいことを提案した。 「よかったら僕、このお屋敷を探検してみたいです」 「屋敷内を?」  途方もなく広く、全部は見て回れないだろうけれど、せめて迷子にならない程度に知っておきたい。  そんな思いから生まれた、藍の望みだった。 「いいだろう。食事がすんで落ち着いたら、君の部屋へ迎えに行く」 「ありがとうございます」  二人の会話に、傍の給仕やガードマンは不安になった。 (もし、この少年が) (屋敷内の物品を盗んで姿をくらましたら……)  彼らの無言の不安を感じ取った渡辺が、代わって雅貴に伝えた。 「雅貴さま、よろしいのですか?」 「彼は私が招いた大切な客人だ。信じるのは、当たり前だろう」  そう。  雨に濡れて打ちひしがれていた彼を、私は進んでこの屋敷に招いたのだ。 (万が一、彼が窃盗をしたとしても、それは私に人を見る目がなかっただけのこと)  雅貴は、そんな風に思っていた。

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