25 / 111

第四章 夢なら、覚めないで。

 幸樹の客室から始まって、雅貴は屋敷内を二人で巡った。  ここが、オーディオルーム。  こちらは、ビューイングルーム。  そして、書斎……。  そんな数多くの部屋を廻る間に目にしたのは、回廊を彩る美術品だった。  鮮やかな風景画。  滑らかな白磁の壺。  そして……。 「あ、金魚!」  藍は思わず、金魚の泳ぐ水槽に駆け寄った。 「君は、金魚が好きなのか?」 「はい」  夢中で眺める数匹の大きい金魚は、ランチュウという。  一尾300万円という値段を知れば、藍は尻込みしただろう。 「赤い べべ着た かわいい金魚……」  思わずこぼれた藍の歌に、雅貴は微笑んだ。

ともだちにシェアしよう!