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第四章・6
藍が雅貴の部屋まで招待されたことを、渡辺はひどく喜んだ。
「まさに、青天の霹靂! 何かお祝いをしなくては!」
「少し、オーバーじゃないですか?」
ただ、中に入れてもらっただけだ、と藍は言う。
だが、渡辺はそれこそが一大事なのだ、と興奮している。
「やはりあなた様は、雅貴さまの御心を解き放つ、運命の御人だったのですね!」
「運命、だなんて。そんな」
運命のつがい、という伝説が、藍の脳裏によぎった。
赤い糸と同じく、宿命的に出会い結ばれる、αとΩのおとぎ話だ。
(でも、そんな。僕と雅貴さんが、運命のつがいだなんて)
いけない、と藍は首を横に振った。
(これ以上、何かを望んじゃだめだ。期待しちゃ、だめだ)
「渡辺さん、雅貴さんはそんなつもりで僕を部屋に入れたのではないと思います」
「何と、『雅貴さん』ですと!? 雅貴さまは、そう呼ばれることをお許しになられたのですね!?」
「ええ、まぁ……」
やはりお祝いだ、と渡辺は藍の部屋を足早に出ていく。
「雅貴さまがお名前を呼ぶことをお許しになるのは、久しぶりですからね!」
ディナーは奮発します、と言い残し、渡辺は消えた。
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