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第五章・3
「私は何か、悪いことを藍くんに言ったんだな」
すまない、と雅貴は藍を背負った。
「雅貴さん」
「君の部屋へ、行こう」
回廊ですれ違いざまに、渡辺に言う。
「ディナーは、藍くんの部屋で」
「か、かしこまりました」
何事か、と目を円くする渡辺を置いて、雅貴は藍を部屋へ運んだ。
(家に帰る、と聞いた後に、藍くんの具合がわるくなったのだ)
訳ありの家出少年と薄々感じてはいたが、このショックはただ事ではない。
(何があったんだ、彼に)
すでに『藍の部屋』となった客間に雅貴は到着すると、すぐに彼を寝室のベッドに寝かせた。
「すみません……」
「少し、眠った方がいいか?」
「いいえ。きっと怖い夢を見ます」
「家の夢、か」
「はい……」
何があった、と尋ねるわけにもいかず、雅貴はただ藍の手を握っていた。
彼のそばに寄り添い、その心が落ち着くのを待った。
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