38 / 111
第五章・7
「いやぁあ! いやだぁあ!」
「藍くん!?」
絶叫し、暴れる藍を、雅貴はとっさに抱きしめた。
小さな体でもがく藍の肩や背中を撫でさすり、必死でなだめた。
「藍くん、大丈夫だ! 私だ。雅貴だ。解るか!?」
「助けて! 助けて、雅貴さん!」
大きな体ですっぽりと藍を抱きとめ、雅貴はその髪を撫でた。
「ここは、私の屋敷だ。怖い君の家じゃない。安心していいんだ」
「うぁ、あ。あ……、雅貴さん?」
「目が覚めたか」
涙に濡れた藍の頬を、雅貴は指でぬぐった。
「全部、夢だ。君の家は、ここだ。どこにも行かなくて、いいんだ」
「雅貴さん!」
藍は、雅貴の胸に顔をうずめて泣いた。
ともだちにシェアしよう!