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第六章 傍にいてくれる人は

 改めて藍は心療内科の医師に診察を受け、雅貴もそれに付き合った。 「自分では、嫌なことは話したくないだろうから」  そう言って、藍の代わりにその陰惨な過去を医師に告げた。  待合室の穏やかなクラシックを聴きながら、藍は雅貴が診察室から出てくるのを待った。 「待たせたね」 「雅貴さん」  雅貴は軽くうなずき、藍の隣に掛けた。 「お医者様は、私のことも診てくれている、信頼のおける方だ。安心していい」 「雅貴さんも?」 「まだ、薬を処方してもらっている」  まだ、と言うことは。 (雅貴さんも、過去に何かあったんだな)  それは、家族のことだろうか。  藍は考えを巡らせようとしたが、医師に呼ばれた。 「今度は、一緒に行こう」 「はい」  二人で、診察室へ入った。

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