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第六章・4
「白沢さま、申し訳ございません。本日のディナーは、お一人で召し上がっていただきます」
夕刻、渡辺にそう告げられ、藍は不安になった。
「雅貴さんに、何かあったんですか?」
「さる高貴な御方との、会食があられまして」
誰だろう。
(まさか、……恋人!?)
「遅くなるので、白沢さまには先にお休みになられるようにと」
(ええっ!?)
藍の頭には、艶っぽい雅貴とその恋人のイメージが張り付いてしまった。
お食事して、お酒を飲んで。その後……。
「やっぱり。思った通りだ」
変に期待なんかしちゃ、ダメだ、って。
嫌になるくらい、学習したはずなのに。
「雅貴さんは、素敵な大人の男性だもの。恋人くらい、いるよね」
それにしても、渡辺さんは僕のことをあんなに喜んでくれていたのに。
『やはりあなた様は、雅貴さまの御心を解き放つ、運命の御人だったのですね!』
「恋人さんには、心を開いてないのかな。雅貴さんは」
それも、妙な話だ。
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