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第六章・6

 シャワーを浴び、上質な泡で全身を清め、バスタブから出るころになっても、藍は雅貴への恋心をきれいさっぱり洗い流せなかった。 「正直、身分違いだよ。家出Ωと、富豪のαなんて」  だけど、どうしても消すことのできない、新しい雅貴への思い。 「好きだけど。雅貴さんのことは大好きだけど、そんな意味じゃなくって」  独り言をぶつぶつつぶやきながら、藍は姿見に体を映した。  浮き出ていたあばら骨はずいぶん目立たなくなり、しなやかな肉がついてきている。  ほっとした藍だったが、そんな自分の体に痕を見つけた。 「これは……」  藍が実家で取らされた、最後の客はサディストだった。  様々な道具で藍をいじめ、挙句の果てにはナイフで自分の名前をその肌に刻み込もうとしたのだ。  さすがに継父が止めに入ったが、深い傷が一筋、その胸に残った。 「う、うぅっ!」  ダメだ。  吐いちゃう!  藍は、バスルームへ逆戻りした。  そして、全て吐き戻してしまった。

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