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第六章・7
「おかえりなさいませ、雅貴さま」
「うん。藍くんは?」
「白沢さまでしたら、ご自分のお部屋に」
「そうか」
もう寝ているかもしれないが、一度顔を見ておこう。
そう考えた雅貴は、藍の部屋のドアを叩いた。
「……?」
応答が、ない。
「本当に、もう寝てしまったんだろうか」
雅貴は部屋に入ると、寝室の扉を開けた。
ベッドに、人の寝ている凹凸が見える。
その姿にほっとした雅貴は、そちらに近づいた。
寝顔を見て、さらに安心したかったのだ。
「藍くん、寝ているか?」
「雅貴、さん……」
だが、そこにいたのは涙に濡れた藍の顔だった。
素裸を掛布でくるみ、寒い寒いと震えている。
「どうしたんだ。何かあったのか!?」
「ごめんなさい。大丈夫です」
それでも藍の目からは、涙がぽろぽろこぼれてくるのだ。
雅貴は、その体をしっかりと抱きとめた。
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