53 / 111

第七章・6

「どうしよう」  藍は、起きていながらベッドから出ることができなかった。 「昨夜、僕は。僕は、雅貴さんに」  あんな恥ずかしい、はしたない姿をさらした! 「雅貴さん、呆れてるよね。怒ってるかも、しれない」  そうしたら、このお屋敷から追い出されるかもしれない。  考えれば考えるほど、マイナス思考に陥ってしまう。  そんな藍の朝を打破したのは、他ならぬ雅貴だった。 「おはよう。良い朝だ」 「ま、雅貴さん」  ノックもせずにドアが開き、ワゴンを押した雅貴が入って来たのだ。 「いつまで待っても、朝食の席に現れないのでね。こうして持ってきた」 「……」  掛布を頭からすっぽり被って、恥ずかしがっている藍が可愛い。 「さあ、起きて。シャワーを浴びてから、朝食だ」  雅貴の声は優しく、いつもと変わらない。  藍は勇気を出して、訊ねてみた。

ともだちにシェアしよう!