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第八章・3

「僕は、雅貴さんが好きなの?」 (好きだよ。大好きだよ) 「雅貴さんは、僕が好きなのかな?」 (嫌いじゃない、と思うよ) 「妹尾さんは、雅貴さんのことをどう思っているのかな?」 (それは、訊いてみないと解らないね)  自問自答を繰り返していると、背後から声を掛けられた。 「どうしたんだ? 何を言ってる?」 「あわゎ、雅貴さん!」  藍は慌てて、逆に問い返し話をそらした。 「お電話、妹尾さんにですか?」 「うん。昨晩のお礼だったよ」  そして。 (また、誘われてしまった)  これは、藍に言うべきかな。  雅貴は雅貴で、昨夜のことは藍の心身を守るため、と思っていた。  そこには確かにエロスはあったが、年上の自分が藍を保護するための方法のひとつ、と感じていた。 (藍くんが、私のことを好きとは限らないしな)  好き、ではあるだろう。  ただそれは、自分を守ってくれる存在だからだ。  恋愛対象としての好き、ではないと思っていた。

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