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第八章・7

「今度、妹尾さんの御子息と食事をする時に、藍くんも同席してくれないだろうか?」 「ぼ、僕もですか!?」  雅貴さんの、恋人さんかもしれない人と!? 「正直、あまり気乗りがしないんだ。藍くんが一緒なら、楽しい会食になるかもしれない」 「僕、大丈夫でしょうか」  それには渡辺が太鼓判を押した。 「白沢さまは、すでに一通りのマナーを身に着けておいでです。妹尾さまの前でも、ご立派に振舞われると思います」  決まりだ、と雅貴は微笑んだ。 「渡辺、藍くんのスーツの準備を頼む。ドレスアップして、小さな社交界デビューだ」 「かしこまりました」  藍は、眉根を寄せて口をぽかんと開けていた。 (僕、大丈夫かなぁ)  なにせ相手は、大臣の御子息さまだ。 (粗相があったら、雅貴さんに恥をかかせちゃう)  これは気を引き締めてかからないと、と自分に言い聞かせていた。

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