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第九章 破談

(せっかくテーブルマナーを身に着けたのに……)  実莉との会食は、懐石料理だった。  だが、こちらの方が少しでもリラックスできる。  銀のカトラリーより、箸の方が付き合いは長いのだ。  そして、実莉は考えていたよりずっとフレンドリーな、20代の青年だった。 「初めまして。僕は、妹尾 実莉といいます」 「白沢 藍です」  にこやかに名前を告げた後は、藍を巻き込んだ自己紹介をしてきた。 「僕の第二性はΩだけど、白沢くんも、もしかして同じ?」 「はい。でも、どうして解ったんですか?」 「体格、小さいから。僕も人のこと言えないけど」  そして、雅貴が取り残されないように話を振る。 「平さんは、見るからにαですよね。身長、どれだけあるんですか?」 「183cmです」  そこで、大きいよね、と藍を見て笑う。 (明るい人だな)  それが、藍が抱いた実莉の第一印象だった。

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