63 / 111
第九章 破談
(せっかくテーブルマナーを身に着けたのに……)
実莉との会食は、懐石料理だった。
だが、こちらの方が少しでもリラックスできる。
銀のカトラリーより、箸の方が付き合いは長いのだ。
そして、実莉は考えていたよりずっとフレンドリーな、20代の青年だった。
「初めまして。僕は、妹尾 実莉といいます」
「白沢 藍です」
にこやかに名前を告げた後は、藍を巻き込んだ自己紹介をしてきた。
「僕の第二性はΩだけど、白沢くんも、もしかして同じ?」
「はい。でも、どうして解ったんですか?」
「体格、小さいから。僕も人のこと言えないけど」
そして、雅貴が取り残されないように話を振る。
「平さんは、見るからにαですよね。身長、どれだけあるんですか?」
「183cmです」
そこで、大きいよね、と藍を見て笑う。
(明るい人だな)
それが、藍が抱いた実莉の第一印象だった。
ともだちにシェアしよう!