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第九章・3
「ところで。白沢くんのお住まいは?」
「え? えっと……」
デザートのクラウンメロンを食べながら、実莉はさらに深く訊いてきた。
「彼は、私の屋敷に住んでいます」
代わりに答えたのは、雅貴だった。
「ご一緒、に……?」
初めて、実莉は言葉に詰まった。
他人同士が、同じ屋根の下に住む、とは一体……?
「あ、あれですね。ご親戚だったり」
「しません」
柔らかだが、ハッキリとした雅貴の口調に、藍はとまどった。
(雅貴さん、一体何を考えてるんだろう)
それでも実莉は、笑顔を絶やさなかった。
やや引き攣ってはいたが、自分に都合のいい解釈を口にした。
「ああ。実は、バトラーの息子、だったりとか……」
藍を今まで上流階級の子息と思い込んでいた実莉だが、彼の身分を落としてまで嫌な予感を払拭しようとした。
「藍くんは、私の大切な人です」
その言葉に、藍の顔は赤くなり、実莉の顔は白くなった。
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