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第九章・6
郊外にある、ログハウスのようなカフェに、雅貴と藍を乗せた車は停まった。
「雰囲気のある店だ」
「カッコいいですね」
ドアベルを鳴らし中に入ると、芳しい香りが二人を出迎えてくれた。
そして、落ち着いたジャズの調べが。
マスターは声の渋い、初老の男性だった。
「私は、ブルーマウンテンにしようかな。藍くんは?」
「僕も、それを飲んでみたいです」
同じコーヒーを二つ注文し、雅貴は藍に詫びた。
「さっきは本当にすまなかった。まさか、あんなことになるとは」
「いいんです。でも、もしかして」
「ぅん?」
「妹尾さんのストッパーとして、僕を食事会に誘ってくださったんですか?」
「聡いな、藍くんは。確かに、結果としてそうなった」
本当は、もっと穏便に話を進めたかった、と雅貴は言う。
「藍くんを同伴した時点で、妹尾さんが察してくれれば良かったんだが」
「ごめんなさい。僕がもっと、大人だったら」
大人の素敵な人間だったら、妹尾さんも僕のことを……。
(雅貴さんの恋人だ、って一目で勘違いしてくれたかもしれないのに)
藍は、瞼を伏せた。
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