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第十一章・6
「今夜は、ここで。私の部屋で休んでくれるかい?」
「いいんですか?」
二人でシャボンを使いながら、そんな甘い会話を楽しんだ。
「ずっと、藍といたい。そんな気分だ」
「僕もです」
シャボンの味のするキスをして、二人はバスルームから出た。
お互いの体をタオルで拭きあい、脱ぎ捨てたパジャマを身に着けた。
「おいで、藍」
「はい」
藍は、広い雅貴の胸にすっぽり収まると、その顔を見上げた。
優しいまなざしの、笑顔。
「さあ、もう明かりを消すよ」
じっと見つめられ、照れてしまった雅貴は、ベッドサイドを探って照明を落とした。
「藍、子守唄を歌える?」
「いいですよ」
赤いべべ着た 可愛い金魚
おめめを覚ませば 御馳走するぞ
もう二度と味わうことはないと思っていた安らぎを、雅貴は覚えていた。
永劫に訪れることはないと思っていた幸せを、藍は感じていた。
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