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第十一章・7
「雅貴さま、これは一体……!」
朝、雅貴の起床に合わせて部屋を訪れた渡辺は、絶句した。
ベッドには、若き主が。
そしてもう一人、幼い客人が共に寝ているではないか!
まだ夢の中にいる藍の頭を一つ撫で、雅貴は照れ笑いを浮かべた。
「そういうことになった。今後ともよろしく頼む」
「雅貴さま。合意の上、と信じてもよろしゅうございますね?」
「当たり前だ。藍を無理やり、などと無体なことをできるはずがない」
さらりと語った雅貴の言葉を、聞き逃す渡辺ではなかった。
「今、『藍』とお呼びなさったので?」
「くどいぞ、渡辺」
そういうことになった、と雅貴は念を押した。
藍は、今日この日から、雅貴の想い人になったのだ。
「お、お祝いを! 屋敷を上げて、お祝いを!」
「おいおい、朝食にサロンのシャンパンを出したりするんじゃないぞ」
ばたばたと部屋を出ていく渡辺の背中に、雅貴はそう声をかけていた。
「ん……」
「起こしてしまったか」
「あ、おはようございます。雅貴さん」
「おはよう、藍」
ちゅ、と二人は自然な仕草でキスをした。
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