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第十一章・8

 モーニングキスをした後に、藍はとたんに恥ずかしくなった。 「ごめんなさい! 僕ったら、何か馴れ馴れしいですよね!」 「それくらいで、ちょうどいいよ」  笑いながら雅貴は、もう一度キスをくれた。  ベッドから降りカーテンを開けると、そこには明るい日差しが。  藍は、雅貴がくれた言葉を思い出していた。 「雅貴さんの言ったとおりですね」 「ぅん?」 「雨はいつか必ず上がる、って」  そうだな、と雅貴は藍を見た。  今まで見てきた中で、一番いい笑顔。  彼の心に振っていた雨は、今上がったのだ。 「だが、またいつ雨が降るか解らない。前に進むということは、そういうものだ」 「はい」 「その時は、私が君の傘になるよ」  もう二度と、藍をずぶ濡れにさせたりしない。  雅貴は、強く心に誓っていた。 「雅貴さん……、ありがとうございます」 「さあ、起きよう。新しい今日の始まりだ」 「はい!」  晴れ渡った光の中に、二人は一歩を踏み出した。

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