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第十二章 プロポーズ
藍が雅貴と出会ってから、一か月近くが経っていた。
痩せてみすぼらしく、泣き虫だった少年は、見違えるほどしなやかになった。
体も心も丈夫になり、雅貴を支える、無くてはならない存在になっていた。
「藍、一つお願いがあるんだが」
「何でしょう」
「東側の庭園を、いじりたい。秋の花を植えたいと思っているんだ」
「あの、芝生の」
そうだ、と雅貴はティーカップをソーサーに置いた。
「満月に合わせて、観月会を開くんだ。晩餐会は夜だが、昼からお客様はお越しになる」
「はい」
「秋の花々で、お客様をおもてなししたい。何をどこに植えるか決めて欲しい」
「解りました」
こんな大切なことまで、雅貴は藍に託すようになっていた。
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