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第十三章 決別
雅貴は、静かに二杯目のコーヒーを口にした。
藍は、ケーキに手も付けずに緊張していた。
「遅いな」
「すみません」
「君の謝ることじゃないよ」
そう言う雅貴の顔は柔らかに優しかったので、藍はホッとした。
二人は、街の中心にある高級ホテルのラウンジに来ていた。
藍の継父に会うためだ。
「それより、藍。気持ちは落ち着いているかい? 彼に会っても、大丈夫か?」
「雅貴さんが一緒なら、平気です」
もう18歳の藍は、親の承諾がなくても結婚ができる。
だが雅貴は、一度だけ会う、と決めたのだ。
『式や披露宴には、招待しない。ただ、君としっかり決別させようと思ってね』
けじめをつける。
そんな雅貴の気持ちが解らないでもなかった藍なので、もう一度だけ継父に会う決心をしたのだ。
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