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第十三章・3
「実は、私と藍くんはこのたび結婚する運びとなりました」
「な、何だって!?」
「つきましては、こちらの同意書にサインと押印をしていただきたい」
「……!」
継父が何か言う前に、雅貴は小切手を取り出した。
「ここに、10億円あります」
そして、すまして言うのだ。
「結納金、と考えてくださって、結構です」
ただし。
「ただし、この同意書にサインがなければ、これは差し上げるわけにはまいりません」
「よ、よこせ。その紙っきれを! サインでも何でもするから!」
継父はゆがんだ筆跡で書面にサインをし、拇印を押した。
「どうだ!?」
「それで結構です」
雅貴は10億の小切手を切ると、継父に差し出した。
「どうぞ。これはあなたのものだ」
継父は、涎を垂らす勢いで、雅貴と藍を見た。
(藍の奴、とんだ金づるを咥え込みやがった!)
継父にとってはもう、雅貴は魔法の財布のようなものだった。
金はいくらでも、こいつから搾り取れる。
そのくらいにしか、考えていなかった。
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