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第十三章・5

「これで藍は、真に自由だよ」 「ありがとうございます、雅貴さん。でも……」 「ぅん?」 「10億円だなんて」  いいんだ、と雅貴はうなずいた。 「半端な金を握らせると、後々厄介だ。もう二度と、彼の顔を、藍に見せたくないからね」  後は書類をそろえて、婚姻届けを出して、と笑顔の雅貴に、藍は面食らっていた。 (お金持ちだと思ってたけど。解ってたつもりなんだけど、半端じゃない!)  なにせ、10億もの大金を、軽く使ってしまう人なのだ。 「あの。雅貴さん」 「何だい」 「僕、雅貴さんのパートナーとして、ちゃんとやっていけるでしょうか」 「もちろんだ」 「でも、あの。家計のやりくりとか」  それは大丈夫、と雅貴は藍の頭に手を置いた。 「ちゃんと会計士がやってくれるから」 「じゃあ、一つだけ」 「何かな」 「無駄遣いは、ダメですよ?」  ああ、解った。  雅貴は晴れやかな笑顔で、藍の髪を撫でた。

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