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第十三章・6

 藍の造った秋の庭園は、観月会に招かれた客人を喜ばせた。 「秋の七草とは、なんと雅な」 「風すら彩られるようですね」 「心洗われる思いですわ」  賞賛を述べる人々に、雅貴は胸を張って言う。 「わたくしの、婚約者が考案いたしました」  そして、皆は二度驚くのだ。 「それは、おめでとうございます!」 「どのような、お方で?」 「さぞ、素晴らしい感性をお持ちの人でしょう」  雅貴は、鼻が高かった。 「藍、皆さんが君のことを評価してくださっている」 「僕、恥ずかしいです……」  そして、藍は不安にも思った。 (僕は高貴な家の出なんかじゃないのに。大丈夫かな)  晩餐会で、正式に紹介する、と雅貴には聞いている。  どきどきと、落ち着かないまま藍は夜を迎えた。

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