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第十四章・6
季節が巡る。
景色が変わる。
藍は、大学生になっていた。
氏名は、平 藍になっていた。
可愛らしい印象はそのまま大人になったので、学生はこぞってお近づきになりたがったが、左手の薬指に光る指輪が、それを黙らせた。
「もう結婚してるらしいぞ」
「お相手は、あの平家の当主だって」
「指輪、カルティエだよ」
これは指一本手出しができない、と男どもはうなだれた。
その中には、教授までもが入っているという。
「藍はみんなに好かれるから、心配だよ」
「僕だって、雅貴さんの浮気は怖いです」
浮気なんかするもんか、と雅貴は笑う。
「その時は、腹を切るよ」
笑い合い、二人はアイスティーのグラスを合わせた。
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