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第2話

『ただいま』 「おかえり」 (父さん、帰ってきたんだ!!) 父親は医師で、 医師不足の沖縄の 離島に派遣されている。 美咲が憧れている 医師の1人だ。 「美咲、座りなさい」 『うん』 (さっきから思っていた  けど、何か暗いな。  深刻な話なのかな) 美咲は不安になった。 家族揃っての会話は 久し振りだからだ。 「美咲、佐藤家には  しきたりがある」 『し、しきたり?  何それ』 美咲は意味が分からなかった。 今の時代にそんなものある のだろうか。 「明日から、お前は  神宮寺家の花嫁になる」 『神宮寺、家。  あの神宮寺家!?』 神宮寺家は家族で 病院を経営している。 大きな病院だ。 「あぁ、そうだ。  病院を経営している  神宮寺家だ」 『そんな!!  僕は男だよ』 「今は、薬で性転換  が出来る」 そう。今は医療が発達して 手術をしなくても性転換 が出来る時代になった。 『じゃあ、僕は女性  になるの?』 「あぁ。そうなるだろう」 「ごめんね。美咲。  私があと1人女の子  を産めなくて」 美咲の母親は、今は元気だが 美咲を産んだとき、産後うつ になった。そのため、子供を 産むのに、ドクターストップ がかかったのである。 『母さんのせいじゃないよ。  僕、自分の子供欲しかったし』 美咲は初めて家族に嘘をついた。 本当は怖いけど、家族に心配を かけたくなかった。 『分かった。僕神宮寺家に  行くよ。元気な赤ちゃん産むね!!』 「美咲、無理してない?」 『大丈夫だよ。母さん。  もし、断れば何か  ペナルティーが下される  んでしょ』 「あぁ、まず俺の医師免許は  剥奪される」 (やっぱり、そうなんだ) 神宮寺家は権利を行使して 何かするに違いないと 思ったのだ。 『僕は大丈夫。明日行くよ』 美咲は覚悟を決めて行く 事にした。

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