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【12】-4

 仕事をいくつか進め、コンペの作品制作に必要な準備を整えていると、清正が帰ってきた。  日付が変わろうとしている。 「光ー、土産があるぞー」  玄関に迎えに出ると、小さめの紙袋をぐいっと差し出してきた。  中を覗くと、どら焼きが三個入っていた。 「美味いんだってさ。わざわざ、地元のやつが買ってきてくれたんだ」 「飲んできたのか?」 「会社でな。プチ歓迎会」  靴を脱いで框に上がると、鞄を片手に持ったまま清正は光を引き寄せた。アルコールの匂いに混じって、覚えのある香りが漂った。 「また淳子に会ったのか?」  まさかと思いながら聞くと、「会った」と頷く。 「なんでだよ」  眉をひそめる光の背中を、清正はもぞもぞと怪しく撫で始める。身体を押し返して、ピシリと腕を叩いた。  清正はそのままもたれかかってきた。 「ずいぶん酔ってるな」 「酔ってない……」  酔っ払いの常套句すぎる。    重い身体を引っ張ってリビングに連れていく。ソファに座らせて水のグラスを差し出すと、ごくごくと喉を鳴らして清正はそれを飲みほした。  直後にゲップと酒臭い息を吐きだす。 「あいつの家、こっちのほうなのか?」 「あいつって、あいつ?」  淳子か、と聞くとそうだと頷く。 「時々、帰りの電車で見かける」 「家がどこかなんて知るかよ」  ふうん、と生返事をした清正が、テーブルにグラスを置いて光にのしかかってきた。  抵抗する間もなくソファに倒され、唇を奪われる。 「清正……」 「光、そろそろ続きを頑張ろう」    おもむろに光のパジャマのボタンを外し始める。 「なんで、ボタン外すんだよ。俺、もう風呂入ったんだからな」 「知ってるよ、バカ」  バカってなんだよ。  ムッとしている間に、羽織ったカーディガンごとするりとシャツを剥かれた。上半身が裸になると、舐めるような目で清正が光の身体をじろじろ見た。 「な、何見てるんだよ」 「いやあ、綺麗だなと思って」 「バカか。修学旅行とかで、一緒に風呂入ったろ」 「ああ。あの時は大変だった。見ると勃起しそうで、なるべく見ないようにしてた」  でも、見たいし、と眉を寄せる。  何、言ってるんだこいつ。  絶対、酔っ払ってるなと思いながら、光の頭の中もぐるぐるしていて、返す言葉が見つからなかった。心臓がおかしかった。  黙っていると、軽いキスが落ちてきた。何度か唇に触れた後、顎から喉を辿って鎖骨を吸う。 「あ……」  身体を包むように手のひらを滑らされ、ざわざわと鳥肌が立つような快感が走り抜けた。 「清正、……」 「光、綺麗だ」  平らな胸の上に何の意味もなく存在する二つの突起を、清正の唇が含む。舌の先で転がされると、痺れたような疼きが生まれ、薄い色の粒が小さく尖った。 「何、して……」 「ここ、感じない?」 「か、感じないっ」

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