59 / 119
【12】-5
熱で火照る顔を左右に振った。
もう一方を口に含んだ清正が、尖らせた側を長い指で摘まんで捻る。
「あ、……」
「……感じてる」
「う、嘘だ……」
両手で口を塞いで声を封じた。
片側を歯で軽く噛まれ、もう一方は周囲に円を描くように指先で触れられ、もどかしさを覚える。
時おり、不意を突くように先端を弾かれると、塞いだ手の間から声が零れた。
「あ、ん……」
「いいな。開発のし甲斐がある」
バカ、と文句を言った声が、思いのほか甘かった。
なんだかいたたまれない。
下肢に熱が集まり始め、隠すように膝を擦り合わせる。口元を押さえていた手を掴んでどかされ、深い口づけを与えられた。
絡み合う舌に夢中になっているうちに、兆した場所に大きな手が忍び寄り、包むようにして撫で始める。
光は、ぎょっとした。
思わず清正を押し退け、勢い余って蹴り落としてしまった。
「おまえ、ひどい……」
「ごめ……」
許さない、と起きあがり、再び覆いかぶさってきた清正が、胸のあたりを何度かきつく吸い上げる。
「あ……っ」
白い肌の上に、赤い花が咲いたような印が刻まれた。
花は次々に生まれたが、いくつ目かの印を刻んだ後、清正は光の胸に頬を押し付けたまま、唐突に目を閉じた。
「清正……?」
どうした、と様子をうかがう。清正がぼそりと言った。
「俺、なんか、酔ってるかも……」
「だから、さっきから、そう言ってるだろ!」
「勃たないかもしれない」
「勃たなくていい」
というか、勃つ必要などないはずだ。
「でも、せっかく光が……」
股間に伸ばされる手を、「いいんだよ!」と払い落した。ドキドキする心臓と恥ずかしさとで顔が赤くなるのがわかった。
「おまえ、酒飲むとエロくなる……」
「ホントは、いつもエロい……」
どういう返事だ。
胡乱に思って睨むが、清正はまた目を閉じてしまう。そのまますうすうと寝息を立て始める。
「清正、こんなとこで寝ると風邪ひく」
「うん……」
「スーツ、脱がないと皺になるし」
「……光が、脱がせて」
ソファからごろんと落ちた清正が、ラグの上で大の字になりながら手を伸ばしてきた。
なんなんだよと呟きながら、上着とスラックスを脱がせて、ネクタイを外した。
ワイシャツ一枚になった清正は、ふにゃりと笑ったかと思うと、豪快にいびきをかき始めた。
「ほんとになんなの、おまえ」
返事はない。
無駄に手足の長い大男を軽く足で転がしてラグの真ん中に寄せた。押し入れから布団を出してきて、その上にかぶせる。
エアコンの温度を一度上げて、明かりを消した。
「風邪ひくなよな……」
スーツを持って階段を上がりながら、ふうっと息を吐きだした。
ふと自分の胸元を見下ろして、光はぎょっとした。パジャマの襟の隙間から赤い痕がくっきりと見えている。
「た、ただの鬱血だ」
それがこんなに艶めかしく、心臓をドキドキさせるものだったとは知らなかったけれど。
ともだちにシェアしよう!