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【15】-4
翌週の土曜日は第二土曜日で、汀と朱里との面会日だった。
離婚した時の約束で、二人が会えるのは月に一度と決まっていた。すでに汀の誕生日を一緒にすごしているから、清正が拒めば会うことはできない。
月に一度というルールを、清正はこれまで一度も曲げたことがなかった。
けれど、この日はなぜか朱里が汀に会うことを許した。
それだけでなく、汀を迎えに行った際に、駅のカフェに入って三人でお茶を飲んできた。
帰宅した汀が嬉しそうに教えた。
「みぎわ、おえんじじゅーちゅ、のんだの」
興奮気味の汀の横で「リュック、朱里が喜んでたぞ」と、清正がなんでもない口調で言う。
光は驚いた。朱里の名前をさらりと口にしたことに。
清正の口からその名を聞くのは初めてかもしれない。
以前はもっと神経質だった。
幼い子どもは母親と暮らすのがよいという考え方は、今も根強い。汀が母親を求め、朱里も汀をそばにおきたいと望んだら、清正は苦しむことになるから。
だから、できるだけ汀が朱里に懐かないように、月に一度というルールも頑なに守ってきた。
どこか張りつめたような厳しさで、守り続けてきた。
その張り詰めた気配が、今日の清正にはない。
何か、清正と汀と朱里、三人の中で保たれていたバランスのどこかに変化があったのだと光は思った。
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