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【20】ー3

 職員が先に口を開いた。 「男性の方……?」  見ればわかるだろうと、光はややむっとした。  だが、今はそれどころではない。 「汀は、確かに今朝、一度もここに来なかったんですか? この中にいる可能性は?」 「今日は誰も汀くんの姿を見ていません。保育所の中も、探せるところは探しました。本当にすみません、気付くのが遅くなって……」 「この近くで確認していただいた場所がどこか、教えてください」 「地図とリストがあります。すぐお持ちします」  すでに警察の協力も得ているらしく、細かくチェックが入った地図とリストを手渡された。 「コピーなのでそのまま持っていってください。それから、人が常駐しているところには、見かけたらすぐ連絡いただくようお願いしてあります」 「まだどこからも連絡はないんですね?」  職員は頷く。  ならば、汀はこの駅の周辺にはいないのかもしれない。  一歳の時からこの街で暮らしていても、汀は駅とマンションと保育所以外の場所をほとんど知らないはずだ。  ビルしかない地区で、清正の職場には近くても、子どもが過ごせる場所はほとんどない。  汀が外で遊ぶのは、上沢の家に行った時だけだ。  連絡があった時はすぐに教えて欲しいと言って、携帯の番号を伝えた。  職員は汀の登録カードを持っていて、メモを取る代わりに、この番号で間違いないかと二番目に記された番号を示した。  確認し、間違いないと頷いた。 「あの……、すみません。声をお聞きするまで、ずっと女性の方だと勘違いしていて……」  そんなこと、今はどうでもいい。  光はただ会釈をし、保育所を後にした。  どこから探すのがいいか、クルマと電車ではどちらが効率的か、考える。  光の自宅から清正のマンションまでは電車でひと駅、クルマだと駐車場への出し入れも含めて五分程度なので、ここまではクルマを使った。  マンションから保育所までは歩いてもすぐだったが、後で取りに戻る手間と時間を惜しんでそのまま乗ってきた。  もし、汀が電車に乗ったのだとしたら、ここからは電車で行くほうが早いかもしれない。  クルマは地下駐車場に置いていこうと決めた。  足があるうちにしておくことはあるか考えた時、突然、松井の顔が脳裏に浮かんだ。 「まさか、あいつが……」

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