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【22】ー1
「ええっ!?」
いったいどうして、と思ったが、理由を聞くのは後でいい。
とりあえず急いで清正に電話した。
『どうだった』
コールが鳴るか鳴らないかのうちに声が聞こえる。
「いた」
ほうっと安堵の息を吐くのが端末越しに聞こえた。
今、どのへんにいるのかと聞くと『もうすぐ上沢だ』と答えが返る。折り返して、平瀬の朱里の家に来てくれと伝えた。
『朱里の家?』
「事情は着いたら話すから。とにかく汀の顔を見るのが先だよな」
通話を切ってから朱里に聞いた。
「なんで、真っ先に知らせてやらないんですか」
「だって、汀が、どうしてもダメだって言うんですもの」
先に光に会うのだと、拙い言葉で頑なに言い、ダメならまたどこかに行ってしまいそうな感じだったので、従わないわけにいかなかった。
「汀が泣くことなんて滅多にないから」
光に知らせるのがあんな時間になったのは、そもそも『どら屋』の主人が汀に気付いたのが開店準備をしていた十時前で、朱里に知らせたのが十時頃だったからだ。
それから汀の話を聞き、光に電話をかけたのだが、一度目はなぜかすぐに切られてしまったと言う。
話を聞きながら、光は「あ……」と声を漏らした。
幼稚園の前あたりで切った十一桁の番号は、朱里からだったようだ。
最初の電話を切られた後、朱里は荷物の確認や退去手続きのことで、大家と不動産屋の話を聞かなければならなかった。それが済み、二度目にかけた時に、やっと光と話ができたのだということだった。
「そうだったんだ……」
最初の電話を速攻で切ってしまったことを詫びた。
知らない番号だから仕方ないという朱里の言葉を聞き、ふと気になって訪ねた。
「俺の番号って、どこで……」
「汀の連絡帳に書いてありました」
「ああ……」
保育所のカードにも光の番号が書いてあったことを思い出した。
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