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第10話

 こういうヒーローショーを見んのはいつぶりだっけ? 最近あんまり見てなかった気がする。昔はけっこう見に行ってた。パークで脚本書いてる人がきちんと原作リスペクトしてるし、スーツアクターの動きも上手いし……ってので。  久しぶりに見たヒーローショーもやっぱり面白くて、ドキドキした。周りの子供と一緒になってヒーローに声援送って、楽しかった。  たくさんの笑顔を見られるから、ヒーローって良いな。おれも、ヒーローになりたい。  なんて、小焼に言ったら「は?」って言われるんだろうな。笑いはしないけど、どういう態度かはよくわかる。夢を否定することはないけど、ちょっとだけ、あきれるんだ。わかる。  手を繋いで歩けるだけで、今は幸せだ。誰にも邪魔されたくない。周りの人らもおれらを気にしてない。こういうところのほうが、同性カップルでも目立たねぇのかな。  そんなら、たくさんイチャイチャしたい。駅前でイチャついてるカップルのように、イチャついてみたい! 家でやれよなぁって思うけど、ちょっと憧れるんだよな、ああいうカップル! 「ヒーローのサイン会もあるんですね」 「おう。欲しかったか?」 「要らないです。あれ、中身は俳優ではないんでしょう?」 「スーツアクターだから、俳優っちゃ俳優だぞ。オリジナルキャストじゃないだけで」 「詐欺にならないんですかね」 「夢を売るお仕事だから良いんだって!」 「モノは捉えよう、ですね」  子供がわんさかいるところじゃなくて、離れたところで言うだけ、小焼も考えてくれるようになったようだ。ちょっと前だったら、空気読まずに、サイン会の中心で言ってそうだし。  しばらく歩いてたら、コスプレイヤーがちらほら視界に入ってきた。ブレアンのレイヤーもたくさんいるけど、ダウナーちゃんはいない。露出がアウトなのかな。おっぱいだし。 「あそこにシルキーハスキーがいますね」 「おっ! 見に行ってみるか!」 「ブサイクだったら許せない」 「過激なこと言うなよ」  小焼の推しキャラを見つけたので近づいていく。撮影してるから、邪魔しないようにしねぇとな。女性が撮影してる。でっかい一眼レフだ。すげぇかっこいい。  こういうロリ魔女のキャラって男性のカメラマンが多いイメージがあったんだけど、女性が撮影することもあんだな。 「夏樹のほうが可愛い」 「急に何言ってんだ」 「事実ですよ。もう良いです。行きましょう」  どうやら小焼のお眼鏡にはかなわなかったようだ。おれのほうが可愛いって言われて嬉しいような悲しいような……複雑!  次におれらが向かったのは、ジェットコースター。  小焼は絶叫系が苦手だったような気がするんだけど、一緒に最前列に座った。  そんで、終わってからぶん殴られた。やっぱり苦手だったんだな。無理させちまったや。  人も多いし、小焼は疲れてそうだ。休憩するか。 「何か食べに行こう!」 「ふかふかパンケーキを食べたい」 「あいあい。そんなら、あっちのエリアだな」  マップを片手にパーク内を移動する。小焼が食べたがってるパンケーキの店は、今のエリアから5分歩いた先だ。近くて良かった。逆エリアだとやばいくらい歩かされる。  ちょうどタイミングが良かったみたいで、すぐテーブルに案内された。小焼はパンケーキ食べるし、おれは何にしようかなぁ、とメニューを見て、ハバネロパスタが目に止まった。これならおれでも食える! 甘いものばかりの店じゃなくて良かった!  すぐに注文をして、後は待つだけだ! たのしみ!

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