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第14話
奏からクーポンを貰ったラブホに着いた。
行きたいって言っちまったけど……、そういうこと、できっかな……。普段ならこういうとこに来たら期待でちょっぴり勃つのに……、今は無反応だ。
小焼は優しいからおれに付き合ってくれてるだけ。
そうだって、わかってるし、わかってたつもりだ。好きって言ってくれるのも、きっと、おれと小焼じゃ言葉の重みが違う。
「どの部屋にしますか?」
「おれ、こういうのわかんねぇから、小焼が決めてくれ」
「……夏樹に決めてほしいです」
「わかったよ」
小焼がおれに選択肢を与える時は……何か不安な時だ。いつもは勝手に決める。相談しても最後の決定権は小焼が持つ。だから、小焼も、なんか考えてんのか?
部屋の種類はけっこうあった。体育倉庫、電車、保健室、ありとあらゆるシチュエーションルームがある。とりあえず保健室にした。小焼が好きそうだから。
案内されるがまま部屋に辿り着き、ドアをロックする。
小焼様はスイーツ目当てのはずだ。フロントにキャンペーン中って書いてあった。
ベッド横のクロークにコスプレ衣装が入っていた。学生服が多い。学ラン、セーラー、ブレザー体操服、選び放題だ。
「白玉アイス食べますか?」
「おれはいいや。小焼の好きなの食べな」
「わかりました」
小焼は早速スイーツの注文をしていた。ルームサービスのご利用が早い。
ベッドに横並びになる。目が合う。
「コスプレしないんですか?」
「何着るか悩むよな。小焼の好きなバニーもあるし」
「私のサイズは無いです」
「あったら着んのか?」
「着ます」
バニー服の小焼なんて目に毒だ。えっちすぎる。
クロークを眺めていたら白玉アイスが届いた。小焼は早速食べている。可愛いんだよなぁ。
あっという間にアイスは胃袋の中だ。
「準備してきます」
「……ん」
小焼はバスルームに向かった。
セックスの準備をしてくれる。でも、今のおれの宝剣は……元気が無い。軽く扱いてみる。感じなくなっている。不感症だとか不能だとか嫌だ! おれ、まだ若いのに! まだ、赤ちゃんだって作れるのに!
ううん。…………小焼は、俺の子を産めねぇや。どうしよう……、別れる……? 好きなのに? おれ、どうしたら良いんだ? わかんねぇや。また頭ん中がグルグルして、ごちゃごちゃになってきた。
ベッドに横たわる。ふかふかしてる。ここで、本来なら女の子とセックスするんだ。「セーラー服可愛い」とか「保健室に誰か来ちゃうかも」とか言いながら……。
「お先でした」
「ん。おれもシャワー浴びてくる」
一緒にシャワー浴びたら良かったんだ。
小焼の準備を手伝って、そんままバスルームでセックスしたら良かったんだ。
何で今更気付いたんだろ。遅過ぎる。
小焼の横を通り過ぎてバスルームに入る。
……あれ? こっからベッドが見える? マジックミラーか?
小焼は、おれのこと見ててくれたのかな……。自慰しても勃たなくなってるおれを見てどう思ったんだろ。
シャワーを浴びて戻る。
小焼は体操服を着ていた。楽だからかな。制服だと窮屈だし。
おれも体操服着よっかな。と思ったら、小焼に何か差し出される。ブルマだ。
「夏樹はブルマで」
「ちんこ出ねぇかな」
「私は出ました」
「おっきいおちんちんだもんな」
「何言ってんですか」
小焼が選んでくれたってことでブルマをはいてみる。フィット感がすごい。体操服なだけある。
「はちまきもしませんか?」
「いつの時代のコスプレさせる気だよ」
「似合ってて可愛いですよ」
頭を撫でながら言われた。
小焼に頭を撫でられるのは好きだ。いつもなら、もっと、と意志表示で擦りつくんだけど……、今日は何故かできない。
頭撫でて、頬を撫でて、指先で唇をなぞって……、それからキス。
どうしよう。嬉しいはずなのに、何にも感じない。息苦しいだけだ。小焼の首に腕を回して「もっと」って言えば、いっぱいキスしてくれる。気持ち良いはずなのに。どうしてか、苦しい。
「したくないんですか?」
気付かれた。おれが快感を得ずに苦しさだけ感じてるって。
背中がベッドにつく。小焼がおれの腰の上に乗った。
「女物の体操服似合ってて可愛いですね」
「可愛い可愛いばかり言うなよぉ」
「事実ですから」
服の中に手が入る。今日は着衣プレイかな。乳首を摘まれて、少しうわずった声が出た。でも、いつもより、感じない。
おれが女の子だったら、良かったのに。そしたら、小焼との子供ができる。
小焼が女の子だったら、美少女だったよな。おっぱいも大きいし、顔も綺麗だし、ツンとすました態度が可愛い。きっと高嶺の花だ。
「っ、ふ……ァッ……ん」
「きもちいか?」
「聞くなばか!」
下敷きにされながらも、小焼の胸を揉みしだく。小焼のズボンがテント状になってる。ご立派様が早く外に出たがってるみたいだ。
少し脱がしてやったら、反り返ったちんこがエロ漫画ばりに飛び出す。えっろい……。先走って、透明な液体が流れてる。小焼の匂いがする。好き。大好きな匂いだ。
「欲しそうな顔してますね?」
「ンッ。だって……、小焼の匂い好きだからぁ……」
これじゃおれが抱かれてるみたいだ。
口にちんこ突っ込まれて、イラマチオさせられて、そんまま喉射される。上手く飲み込めなくて、吐いた。鼻に入って痛い。でも、小焼の匂いがいっぱいする。
「ちゃんと飲んでください」
「ごめっ……ん、つぎは、ちゃんと飲むから……」
少しだけ嬉しそうだ。小焼は加虐嗜好だから、こういうことしてて、楽しいんだ。
「…………」
「どうかしたか?」
小焼の動きが止まる。もしかして、一回抜いたから賢者モードになっちまったか? それとも、おれ、何か機嫌を損ねることしたか? さっきまでご機嫌だったと思うのに。
「お前の宝剣は……反応してませんね」
「……ご、ごめん! なんか、ちょっと、調子悪いみたいだ! 朝に触り合いっこしたからかな? あはは」
「無理して笑わないでください。かなり痛々しいんですよ」
落ち着いたよく通る低い声だ。喘ぎ声のような甘さは一切無い。厳しさしかない。
痛々しいって言われちまったや……。もう、何してんだろ、おれ。
恋人とラブホ来てんのに、全く感じない。なんだか苦しくて、涙出てきた。今日のおれ、情けない。
「泣かないでください。困ります」
「っ、ごめん。ごめん……。おれ、ッ……わかんなく、なって……! 小焼のこと、好きなのに……、こんなに、好きなのに……」
頭ん中がグルグルして、言葉が出てこない。小焼に言わなきゃいけないことがたくさんあるはずなのに、言えない。
「小焼、おれ、どうしたら良ぃ?」
「……自分のことなんですから、自分で決めてください。私がわかるわけないでしょうが」
正論だ。
呼吸が浅くなる。駄目だこれ。また過呼吸になりそうーーと思ったところでキスされた。舌を吸われて、舐められて、涙が更に溢れた。
唇を銀糸が繋ぐ。数秒してから、小焼はこう言った。
「私のことを好きってだけで、理由は十分あるでしょうし、答えも出ているんですから、うじうじしないでください。おまえの泣き顔を見ていたら……腹が減って仕方ないんです。……はやく、食べさせろ」
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