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第21話

 腹が減った。何か欲しい。何か食べたい。  夏樹の耳をくすぐる。へにゃっと笑った。 「なつき、ほしい」 「あー、何か買ってきてやっから待ってろ!」  彼はそう言って慌てた様子で去っていった。  耳栓を抜いて、枕の横に置いた。音の波が押し寄せる。こんなに騒がしかったんだな。  身体が熱い。腹が減った。さみしい。早く欲しい。 「っ、ん……」  女でもないのに下着が湿っている。まずい。非常にまずい。少し触れたのが間違いだった。完全に芯ができている。後孔もひくついているような気がする。  高校の文化祭に来ているのに、何考えてるんだ私は。AVならまだしも、現実だ。 「お待たせ! 焼きそば買ってきた!」 「ありがとうございます」  夏樹が焼きそばを3個買ってきた。言わなくても多めに買ってくるところがよくできたやつだ。まるで忠犬のようだな。忠犬なちゅ号か。  ソースの良い匂いがする。一口食べただけで衝撃が走る。今までに食べたことがないような味だ。ソース焼きそばなのに、味は醤油がきついか? 塩辛さが後を引く。それに赤生姜が辛い。これならつけてくれなくて良い。よくこれで店を出しているな? 辛すぎて味がよくわからない。  だが、夏樹は美味そうに食べている。 「辛くないんですか?」 「おれはこのくらい辛いほうが好きだぞ! 小焼には辛すぎたか? イチカラにしてもらったんだけどさ。ゼロにしたら良かったなぁ」 「何ですかイチカラって」 「激辛焼きそば屋があったからさ! 辛さ調節してくれるって言うから、おれのはジュッカラだ!」 「…………腹壊さないでくださいね」 「おう! 心配してくれてありがとな!」  別に心配してないんだが。  買ってきてもらったものを残すのも悪いし、勿体無い。辛さに慣れてきたらソースの旨味を感じられるようになってきた。フルーツ系の味もするので、試行錯誤された焼きそばなんだと思う。少し焦ったが完食できた。  腹が満たされたから、さみしさもない。夏樹が側にいるからかもしれない。なんとなく頭を撫でてやれば、いつもの笑顔だ。 「えへへっ。頭撫でてくれんの嬉しい!」 「そりゃ良かったですね」 「元気になって良かった! Nano♡Yanoを見るなら場所取りしねぇとな! あ、あと、さっき、屋外ステージで女装コンテストしてた!」 「どうでした?」 「可愛い子いたぞ。おれには負けるけどな!」 「夏樹より可愛い子は異世界にしかいませんよ」 「あはは、そりゃ言い過ぎだ」  自信をもって取り組んでくれるようになったから活動もやりやすくなっただろうが……、これはこれで大丈夫か?  養護教諭にお礼を言って、外に出る。相変わらずあちらこちらで学生が呼び込みをしている。  屋外ステージではミスコンが始まっているようだ。メイド服のけいが俯いてもじもじしている。あの子も夏樹くらい自信があれば良いんだが……。この後ライブがあるのに大丈夫か?

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