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ボストンバッグ
「あれ?」
エレベーターのないマンションの階段を軽快に上がって、自宅がある階の廊下に出ると。
「どうしたんだよ。早いじゃん」
玄関扉の前に須藤が座っていた。慎弥の姿を認めると、ゆっくりと立ち上がる。
「早く来れたわ」
「連絡してくれたらよかったのに」
「携帯、寮に忘れてきた。取りに行くの面倒だったから待ってたんだけど」
「そうなの?」
鍵を取り出して開錠すると、玄関の扉を開いた。
「入って」
「ん」
須藤を先に入れてから玄関を閉めて中に入る。そこで、須藤の持っていた荷物に目が留まった。
「……なんか……荷物多いな」
かなりパンパンに膨らんだ大きめのボストンバッグをよいしょ、と床に置き、須藤が靴を脱いだ。
「色々持ってきたから」
「1泊の予定なのに、随分持ってきたんだな」
須藤は今夜1泊した後、チームで参加する翌日の地方イベントへと泊まりで出かけなければならなかった。男の1泊分などたかが知れていると思うのだが、須藤の持ってきたボストンバッグは数泊できそうなくらいの大きさに見えた。
その時には特に気にしていなかった。が、後からこの大きさの意味を嫌と言うほど知ることになるのだった。
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