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サムいわ、俺。

「なあ。夕飯、すき焼きでいい?」 「いいじゃん、すき焼き。そんなの作れんの?」 「まあな。基本的なものだったら一通りは作れる」 「お前、凄いな」 「まあ……一生独りだと思ってたから。この先なにがあるか分かんないし。自分の身の回りのことぐらいできないとと思って」  買い物袋をキッチンへと運びながら、須藤が重く感じないように、気をつけて答えた。  まだ一緒になって1年も満たない2人だから。先のことを匂わすようなことはしたくない。須藤からの未来に関しての言葉など、期待していないかのような口調で話せただろうか。 「……そうなんだ」 「うん」  ガサガサと袋から次々と食材を取り出していると、背後に気配を感じた。後ろからぎゅっと抱き締められる。手を止めて顔だけ振り向かせた。須藤と目が合う。 「どうした?」 「一生独りではないんじゃね?」 「…………」 「残念ながら作る量が2人分に増えるし、運動選手の食管理はめんどいし、大変にはなるかもしれないけど。その分、独りではなくなるよ」 「……そうだといいな」 「そうだって」 「すげー自信だな」 「それだけ覚悟決めて惚れてるってことだろ」 「……そこで照れんなよ」 「いや……自分で言っといてなんだけど、恥ずかし過ぎねえ? 今の」  サムいわ、俺。そう言って、顔を赤くして須藤が離れていこうとしたので、咄嗟に手を伸ばして捕まえる。そのままの勢いで、須藤の頬に軽くキスをした。驚いて須藤がこちらを見る。 「ありがとう」  そう伝えると、須藤が微笑んだ。顔が近付いてくる。目を閉じて須藤の唇を受け止めた。

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