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2度美味しい

 そこから、Tシャツに下着、という格好のまま夕飯を済ませ、買っておいたお菓子を食後のデザート感覚で食べながら酒を呑み続けた。 『あ、これ俺の好きなやつ』  そう言って、須藤がソフトキャンディのお菓子を手に取った。 『そう? だったら良かった。須藤が何が好きか分かんなかったから、色々買ってきたんだけど』 『これ、美味いよ。もちもち感が凄えいいんだよね』  須藤が勢い良く袋を開け、キャンディを1つ取り出すと口へと放った。 『中村も食べる?』 『俺はいい。甘いのそんなに好きじゃないから』 『チョコは?』 『チョコも今はいいかな』 『あ、でもこれダークチョコだって。甘過ぎないし、美味いんじゃね?』 須藤がチョコレートの入った箱も開け、一粒試す。 『うまっ。甘くないよ、あんまり』 『そうか』 『ほら、食べてみ?』 『は? え? んんっ……』  抵抗する間もなく。一粒を口の中に素早く入れて須藤がキスをしてきた。溶けかかったチョコレートが須藤の舌と一緒に入り込んでくる。途端に少し苦いチョコレートの味が口の中に広がった。  クチュ、と小さな音を立てながら舌が絡み合った。その絡み合う舌の間でチョコレートはみるみる小さくなっていく。  完全にチョコレートが溶けてなくなったところで、満足げに須藤が唇を離した。 『美味かっただろ?』 『……お前、これやりたかっただけだろ』 『チョコとキスで2度美味しい』 『誰がそんな上手いこと言えって言った。どっかのCMか』 『CMでこんなベタなのやらねーだろ。はい、もう1個』 『え~もういいってぇ~』  そんな感じでしばらくはのんびりと平和に時間が過ぎていった。が。

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