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おやすみのチューじゃないっ!!
「凄え、良かった」
慎弥の体が通常モードに戻った後、一緒にシャワーを浴びて、ベッドのシーツを代えてから再びベッドの中へと潜った時、隣で満足げに須藤が呟いた。
「俺、途中から記憶が曖昧なんだけど」
「そう? そんなに良かった?」
「良かったって言うか……もういいかな、媚薬は」
「なんで?」
「……だって、媚薬使うと自分にいっぱいいっぱいで全然須藤に集中できないし」
「…………」
一瞬須藤が黙ったので、怪訝に思って須藤を見ると。
「……うわっ、なにその顔」
「……ほんと、可愛いいな、慎弥」
ニヤついた顔の須藤にぎゅううっと抱き締められた。『中村』ではなく、さりげなく『慎弥』と呼ばれたことに気づく。
「ちょ、なんか、キャラ変わってない?? あんなに照れ屋の恥ずかしがり屋だったじゃんっ」
「どっちも俺」
「いや、だけど。セックス前後、ほんと別人なんだけどっ」
「そんなこと言うけど、そしたら慎弥は嫌なわけ?」
「何が?」
「攻める俺は嫌なわけ?」
「……嫌じゃない」
ボソッと答えると、再び嬉しそうな顔で、ぎゅううっと抱き締める腕に力が込められた。
「ちょっと、あんま可愛い発言しないでくれる? もう1回ヤりたくなるし」
「……いやいやいやいや、俺、もう無理だから。今日は」
「そう?」
「そうだって。何回イったと思ってんの? 後ろも前でも」
「え~、そしたらもう1回だけチューしよ。そんで寝るか」
「……わかった」
須藤の腕の中。上目で須藤を見上げる。まだ不思議な感じがする。実ることなど期待していなかったこの恋が成就してもう半年経つのに。未だにこうして目の前に須藤が恋人としていることに慣れない。男前の顔をして須藤がふと笑った。
「……やっとできたな」
「……そうだな」
「慎弥はどうだった?」
「え? 何が?」
「俺は凄え良かったけど。あんまりだったんだろ? 薬使ったから」
少し申し訳なさそうな顔で須藤が言った。
バカだな。
あんまりだったわけがないのに。確かに、初めてで色々使おうとされるとは思わなかったけど。でも。
「……蓮」
こちらもさりげなく、呼び方を変えてみる。須藤が少し驚いたような顔をして、それから優しく微笑んだ。
「ん?」
「薬の件を差し引いても、最高だったから」
「…………」
「蓮との最初だったから。忘れないし……うわぁっ」
がばりと須藤が慎弥の上に抱き締めたまま乗ってきた。その勢いでキスされる。
「んっ……ちょ、蓮? ……んんっ」
舌も入れられて段々と激しくなってくるキスに、必死で抵抗する。
「待て待てっ……もう寝んじゃねーの? ってん……んうっ」
両手で須藤の両肩を押して唇を離そうとするがビクともしない。
こんなの、おやすみのチューじゃないっ!!
心の中で叫びながら須藤との攻防戦はしばらく続き、ふたりの初夜は過ぎていった。
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