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第3話

変わらない日常 3 一緒に暮らし始めたのは今年の4月で、もう8月だというのに。オレはいつでも雪夜さんに惹かれっぱなしで、その度にドキドキして。 今だってオレは雪夜さんを凝視しているし、雪夜さんはそんなオレに優しく笑いかけてくれるから。オレの顔はどんどん赤くなって、恥ずかしさと嬉しさが心の中を埋め尽くす。 「ステラで顔隠してナニしてんだよ、相変わらず可愛い星くん?」 「いや、えっと……あ、雪夜さんって身長高いですよね。飛鳥さんも高かったし、白石家は高身長の遺伝子でもあるんでしょうか?」 オレが恥ずかしいのを分かってるくせに、雪夜さんはわざとらしくオレに問い掛けて軽く首を傾げたけれど。オレは素直に自分の気持ちを言えないから、その代わり咄嗟に思いついたことを雪夜さんに訊ねていた。 「……あー、どうなんだろうな。でも確かに、飛鳥も遊馬も俺とそんな変わんねぇーし、華もなんだかんだで身長あるからなぁ」 羞恥心を誤魔化したオレをからかうことはせず、洗い物を片付けながら雪夜さんはオレの問いに応えてくれて。 「ご両親が2人とも高身長だったりしますか?うちは父さんも母さんも日本人の平均身長くらいしかないから、だからオレは小さいのかなって思てるんですけど……」 雪夜さんの身長は183cm、オレは168cm。 埋まらない身長差はどうすることもできないけれど、それは遺伝的な何かが関係するのかなって思ったオレは兄妹や家族のことを聞いてみた。 雪夜さんは4人兄妹の3番目、長男が飛鳥(あすか)さんで次男が遊馬(ゆうま)さん、そして1番下の長女は華(はな)さんっていう女の子。 飛鳥さんと遊馬さんは実家の車屋さんで働いているらしく、華さんは現役女子大生でモデルの仕事をしている。面識があるのは雪夜さんに容姿がそっくりな飛鳥さんだけだけれど、華さんは雑誌で何度か見たことがあって。 どうやら白石兄妹は美男美女、そして高身長でスタイル抜群の遺伝子を持って産まれてきた激レア兄妹みたいだなってオレはこっそり思っているんだ。 「親父はデカいかもしんねぇーけど、母親はそうでもねぇーと思う。お前はまだ俺んとこの親に会ってねぇーから分かんねぇーよな」 「うん……あ、でも、会ってみたいようなみたくないような複雑な心境になっちゃうので」 「そりゃそうだ。俺んとこのクソ親は自由に生きてるから、俺が何処で誰とナニしてようと気にもしてないと思うぞ。そうじゃなきゃ、あのクソ兄貴があそこまで自由奔放に生きらんねぇーと思うし」 男同士の関係を簡単に理解してもらえるとは思ってないし、雪夜さんのご両親に会う勇気なんて今のオレにはない。色々あってオレの家族には雪夜さんとの付き合いを了承してもらっているけれど、どの家庭でも受け入れてもらえるほどオレ達の付き合いは甘くない。 でも、雪夜さんの兄妹は雪夜さんが言う通り各々の人生を自由に生きていると思うから。深くは知らないけれど、それでも長男の飛鳥さんは雪夜さんよりインパクトが強い人だと思う。

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