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第11話

小さな変化 3 「お待ちどうさま、貴方たち2人が弘樹君と西野君なのね。噂のお2人さん、その節はどうもお世話になりました。はい、どうぞ」 話に花を咲かせていたオレたちの元にやってきたランさんは、カルボナーラが乗ったお皿を弘樹と西野君の前に置く。 「うっわー、すげぇウマそうッ!!」 「ホントだ、美味しそう……でも、噂のってどういうことですか?」 テンション高く両手を合わせて早速食べ始めようとする弘樹と、ランさんの言葉に首を傾げた西野君。オレはそんな西野君の姿を見て、そういえばこの2人は何も知らないんだけって思いながらもランさんの言葉を待つ。 「貴方たちが高校生の時、セイちゃんとの関係がぎくしゃくしたことがあったでしょう?あの時にね、色々と裏で昌ちゃんを動かしたのは私なのよ」 オレたちがまだ高校1年生だった時、西野君は弘樹と仲が良いオレのことをよく思っていなかったらしく小さな騒動が色々あったんだけれど。 友達のことで悩んでいたオレの手をそっと引いてくれていたのが雪夜さんで、そしてその手助けをしてくれていたのがランさんだったから。 オレと雪夜さんの間ではバレンタイン事件って呼んでいる出来事も含めて、ランさんはオレ以外にも弘樹と西野君のことを知っているんだ。 「昌ちゃんって、もしかして横島先生のことですか?じゃあ、あの時横島先生が僕に話してくれた先輩はランさんのことだったんだ」 オレと西野君の担任だった横島 昌人(よこしま まさと)先生は、ランさんの後輩らしい。詳しいことはオレもよく分からないけれど、横島先生はランさんに頭が上がらないんだとかで。 「そうなのよ。だから貴方たち2人のことは昌ちゃんからもセイちゃんからも色々と聞いているの、初対面なのに騒がしいオカマでごめんなさいね」 「そんなことないです。突然押しかけたのにご馳走していただけて、僕も弘樹くんも感謝してるので」 ランさんが横島先生の先輩だってことが分かった西野君は、ランさんに向かいに丁寧に頭を下げて。弘樹と西野君に会えて嬉しそうにしているランさんは、オレに向かいにっこりと微笑んでくれたけれど。 「……ウマッ、すげぇウマい!!悠希、話してないで早く食えって!」 人の話を全く聞かずに目の前のカルボナーラを頬張っていた弘樹が1人で騒ぎ出し、西野君は申し訳なさそうに肩を窄めていく。 「分かった、分かったからもう少し落ち着いて食べなよ。もう、弘樹くんってばなんでもかんでもがっつくんだから」 「しょうがないよ、弘樹だもん。でも、2人とも幸せそうで良かった。顔を見て話さないと分からないことってやっぱりいっぱいあるね、幸せオーラのお裾分けありがと」 ほっぺたにパスタのソースを付けたまま、本当に美味しそうにご飯を食べる弘樹。子供みたいな弘樹の隣りで、お母さん役のような西野君はナプキンを使い弘樹の頬を拭きあげていて。 友達と久しぶりに再会できたことを、オレは家に帰ったら真っ先に雪夜さんに伝えようと思ったんだ。

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