21 / 95

第21話

小さな変化 4 「ありがとうございます、雪夜さん」 ベッドにうつ伏せ、2人で1つのスマホを覗き込みつつ真剣に語るのはなんでもないゲームの話。 学生の時にはあまり感じることがなかったけれど、同棲し始めて毎日顔を合わせているせいか、例えゲームであれどお互いに共有できるものがあるのはありがたいと思った。 爽快アクションゲームや格闘ゲーム、星くんが不得意なゲームは無理に共有することがないし、逆に星が得意とするパズルゲームもケンカの種になるから対戦プレイはしない。 星くんが勝つように俺が手を抜けば星は拗ねてしまうだろうし、もし俺が本気でやって星に負けたら俺が立ち直れない気がするから。お互いに変なプライドの張り合いにならぬよう、対戦ゲームは極力しないのが俺と星の暗黙の了解だ。 いくら容姿と内面が可愛くても、星くんは俺と同じ男だから。最初は遊んでいるつもりでも、気がつくと真剣勝負に変わり、そのうちゲームそっちのけでただの勝ち負けにこだわる男子に変わる。 自分でも男はバカな生き物だとは思うが、誰にだって負けたくないものが1つや2つあるのだから男はバカでも仕方がない。 けれど、星くんの趣味や嗜好に俺が合わせることはできるし、興味のない類いのものでも星が好きなら一緒に楽しむことはできる。 俺の好みじゃない恋愛ドラマや感動映画でも、星が楽しんで観れるのなら俺も楽しいと勝手に脳内が切り替わるし、俺の好みに無理矢理星を巻き込むことはしない。ただ、これは相手が星くんであることが絶対条件で。 わざわざ他人に合わせて生きることなんてできない俺には、星だから許せることが数え切れないほどあるけれど。 好みを無理に合わせる必要がなく、協力してプレイができるこのゲームは俺と星には合っているんだろうと思う。 「……あ、弘樹からLINEでクエスト回れるって連絡きましたよ。西野君が先に寝ちゃったから、弘樹は丁度暇してたみたいです」 「ん、俺も同じ画面見てるから内容は把握した……ってかさ、アイツらヤり終わった直後なのかよ、いらねぇー情報まで書く必要ねぇーっての」 星のスマホを俺も見ているのだから、弘樹から送られてきた文面は星が声に出さずとも分かるけれど。弘樹のバカは相変わらず星に性事情まで話しているのかと、俺は呆れ返ってしまうが。 「オレがせっかくその部分は伏せて読んだのに……今日は久しぶりのデートで、弘樹は西野君のお家にお泊まりだってお店に来た時話してたから、きっと我慢できなかったんですよ」 苦笑いしつつも、バカな親友を庇う星くん。 仲良きことは美しきかなって、微笑んでやれる星くんは攻め側の気持ちを知らない。 俺と星の場合、ピロートークがある時もあればない時もあるけれど……よくもまぁ、ヤった直後に恋人ほったらかしてスマホいじってゲームできるもんだ。 後処理やらなんやら、ヤった後に恋人の身体を綺麗にしてやり服を着せ、シーツを交換して寝心地のいいベッドで腕まくらをしてやるまでが行為においての一連の流れだと俺は思っているから。 付き合い方は多種多様にあるとは思うが、弘樹はもう少し西野のことを大切にしてやった方がいい気がしてならない。

ともだちにシェアしよう!