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第26話
小さな変化 9 R18
全てを喰い尽してしまいたくなるほど愛おしい相手、そんな恋人が自分の前でエロい格好をしていたら大抵の男は飛び付くもんだと思うけれど。
大好物の餌を目の前にして待てと言われている犬のような状態の俺は、ご主人様の意見に従うべきか否か考えてしまうが。
俺の誘い方があまりにも幼稚過ぎたのか、星の頭が言葉の綾を理解しない天然記念物だからなのか。おっ始める雰囲気には不釣り合いな空気を変えるため、俺は星の耳に唇を寄せ囁いていく。
「俺の言い方が悪かった。なぁ、星くん……俺はお前とひとつになりてぇーんだ、だから星のこと今から抱いていいか?」
これで拒否られたら、その時は主人の星の意見に従おうと思った時。小さく動いた星の頭は縦に揺れ、俺の首には遠慮がちに両腕が伸ばされて。星からの言葉はないものの、ご主人様からのOKを貰った俺の頬はニヤけていくばかりだ。
さっきまでは身体に力が入っていたのに、俺が誘い方を変えた途端にくたんと力が抜けていく星くん。相変わらず耳への刺激は効果抜群で、流れに任せて一気に襲うよりもストレートな言葉が持つ押しと優しさに弱い恋人。
そんな星の髪に触れ、俺は壊れ物を扱うように星くんへ想いを伝えていく。焦る気持ちもなくはないが、それよりも優先すべきはコイツが俺にとってどれだけ大事で大切なのかを触れ方ひとつで示すことだ。
大切だから、愛おしいから、だから俺はお前と繋がりたいんだと……誰でもいいわけじゃなく、お前じゃなきゃ駄目なんだと。欲と快楽の狭間で、伝えたい想いは溢れていく一方だから。
髪から耳へ滑り落ちていく手は次を求めて動きだし、言葉を告げるための唇は星の耳朶を甘噛みする。
「っ、ん…ぁ」
恥ずかしそうに身を捩り、頭を俺の肩に押し付けて。
徐々に感じ始めた星の身体を撫で上げつつ、俺は星くんの反応を楽しんでいく。
「星、可愛い」
吐息と共に本音を洩らし、この先の星がもっと乱れていくことを知っている俺は星の耳を舐め上げながら滑らかな素肌に触れる。
ふわりと触り心地のいい星の肌、昔から体力がないのは考えものだが、筋肉質というよりかは単に細身な星の身体はあまり男らしさを感じさせない。
そのせいなのか、ずっと触れていたいと思わせる星くんの身体は感度も良くて、俺としては可愛がり倒したいと思ってしまうんだが。
「恥ずかし、ぃ…ッ、んぅ」
星くんからの返事は、甘い声に乗せられた弱々しい恥じらいだった。
まだ理性が残ったままの頭じゃ、快楽よりも羞恥心が勝ってしまう星くん。真っ昼間から欲しがる俺に合わせてくれてはいるものの、明るい日射しが差し込むベッドでことに及ぶのは恥ずかしいんだろうと思う。
それじゃなくても、俺と星がこうして互いを求めるのは2週間ぶりだし。恥ずかしさからか頑張って声を抑えようと必死な姿も、顔を見られまいと俺に縋りついてくる仕草も、俺を煽りにかかるだけなんだけれど。
「雪夜、さ…ぁ、好き」
恥ずかしいと言っておきながらも俺にぎゅっと抱き着き好きだと囁いてくる仔猫に、俺は翻弄されていくばかりだ。
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