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第28話

気づいたこと 2 R18 待ち望んで、いた……んだけど。 「……お前、この痣どうした?」 下へ下へとおりていたはずの雪夜さんの手がぴたりと止まり、問い掛けられたオレは意味も分からず首を傾げてしまう。 ワンピース状態だった雪夜さんのパーカーはオレの胸元でくしゃくしゃにたくしあげられていて、オレは問われた痣がどの痣なのか見当もつかない。 ……というより、痣を作った覚えがないから訊ねられてもオレにはさっぱり分からないんだけど。 「ここ、右の太腿の外側んとこ。赤紫色になってっけど、大丈夫か?どっかでぶつけた?」 右の太腿、外側、その情報だけを頼りにオレは必死で考える。痣になるほど強くぶつけた記憶はないけれど、ひとつだけ心当たりがあることを思い出したオレは口を開いて。 「それは……たぶん、昨日職場のテーブルにぶつけたやつだと思います。そこまで痛みもなかったから、すっかり忘れてました」 腫れているわけでもなければ、痛みがあるわけでもない。逆に痣になっていることが不思議に思うし、雪夜さんが心配するほどのものでもない。だからオレは、大丈夫だよって意味を込めて雪夜さんにそう言ったのに。 「そっか、気をつけろよ」 なんだかあまり機嫌がよろしくなさそうな雪夜さんは、オレの頭を軽く撫でていくけれど。 「は、いっ…ん、ちょっと」 オレの返事を聞いているのか、いないのか。 雪夜さんは赤紫色の小さな痣に唇を寄せてゆっくりと舐め上げると、チュって優しいキスをして。 上擦った声が漏れたオレは、自分の不注意でぶつけた場所を雪夜さんにまじまじと見られていることが恥ずかしくなってしまったから。オレはなるべく雪夜さんにその箇所を見られないように、小さく身を捩ってしまう。 でも、雪夜さんにはそんなことしても無意味な抵抗に過ぎなかったらしく、オレの動きは雪夜さんの両手で簡単に止められてしまった。 「昨日できた痣なら温めてといてやるから、大人しくしてろ。俺以外が、お前の身体に痕つけんのは気に食わねぇーからな」 ……だから機嫌悪そうだったんだ、この人。 いや、でも。 嬉しいようなありがたいような、けどちょっぴり大げさな雪夜さんの言葉が可愛くて。自分がされていることを忘れて反論しようとしたオレは、本来出したい声のトーンよりも少し高めの声が出て。 「っ、ん…でも、それはオレが自分でぶつけちゃっただけだから…ぁ、痕つけたのは人じゃなくて物、だし…」 痣を温めることで得られる効果があるのかは分からないけれど、雪夜さんはオレの痣に熱い吐息を吹きかけることを止めようとしない。 それどころか、反論したオレが悪いかのように、雪夜さんはニヤリと笑って。 「お前さ、俺の心の狭さなめんなよ?」 「なめて、ないっ…ァ、んぅ」 誇らしく言うことではないし、痣の1つで嫉妬されてしまったらテーブルが可哀想だと思うけれど。 「ったく、可愛い反応しやがって。お前にこんな痕つけたのが人間だったら、俺はソイツ殺すからな。俺がこんだけ大事にしてる星くんを、他人に傷つけられてたまるかよ」 やっぱり可愛い雪夜さんには適わないから、オレはもう雪夜さんの好きなようにさせてあげようと思った。

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