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第29話

気づいたこと 3 R18 雪夜さんの好きにさせる……でも正確には、オレが雪夜さんの好きなようにされるわけで。 「やっ、ぁ…も、ムリぃ」 「…ん、気持ちイイな」 雪夜さんが見つけた痣で一度は止まった行為、でもそれもすぐに再開されて気がつけばオレのカラダは雪夜さんを受け入れ揺れている。 さっきまで、オレの中では可愛い大型犬だったはずの雪夜さんなのに。今は可愛いを通り過ぎ、直視できないほどカッコイイ表情を見せる狼になっていて。 「ゆきっ、はぁ、ん…ッ!」 気持ちいいのはもちろん気持ちいいし、朝の心のモヤモヤなんか嘘みたいに何も考えられなくなってはいるけれど。オレと雪夜さんの余裕の差が激し過ぎて、オレは息をするのが精一杯なんだ。 緩やかに押し寄せる波のような刺激、オレはそれに溺れてしまうのが怖くて。理性を手放し素直に快楽だけを感じることを恥じてしまうオレは、ぎゅっと目を瞑ってしまうけれど。 「ふ、ぅ…ん、あぁっ」 漏れ出る声をどれだけ抑えようとしても、息を吸う度に、吐く度に、強く噛んだ唇の端からこぼれ落ちていく。 そんなオレの頭をよしよしと撫でて髪に指を絡ませた雪夜さんは、オレの耳元でクスッと笑って。 「星…目開けて、俺を見ろよ?」 優しく優しくかけられた言葉に、カラダの力が勝手に抜けていくのが分かった。でも、重なっていた雪夜さんの上半身が少し離れて、雪夜さんの首にしがみついていたオレの手はベッドのシーツを掴むから。 ゆっくり見つめた視線の先には、オレを見下ろし柔らかく微笑む雪夜さんの姿があって。 「だめ…っ、これ…や、ぅ」 雪夜さんの優しさに包まれて、安心したのもつかの間で。見つめ合った瞳の奥に潜む雪夜さんの欲に、オレのカラダは一気に緊張感が増していく。 「何考えてんのか知らねぇーけど、なんも怖くねぇーから、ちゃんと俺だけ感じてろ…ッ、そう、いい子」 視線だけで感じてしまうカラダなんて、淫らにもほどがある。そう思ってしまうのに、オレの目からはポロポロ涙が溢れていくばかりで潤んだ瞳は「もっと」って、雪夜さんにせがむんだ。 絡まる視線は逸らすことが出来ず、乱れる息を整えることすら出来ない。こんな姿、きっと誰が見てもはしたないと思うんだろうけれど。 「雪夜っ、あ…ゆき、ん、はぁ…」 泣きじゃくって必死で雪夜さんだけを求めるオレを、雪夜さんは可愛いって抱き締めてくれるから。 「星、愛してんぞ」 どれだけオレが雪夜さんに溺れることを拒もうとしても、波打ち際で寄せては返す波の動きに逆らったとしても。結局、雪夜さんが囁いてくれる愛の言葉には適わなくて。 恥ずかしさも、気持ち良さも。 それから、よく分からないぐちゃぐちゃな感情も。 全てが交ざり合いひとつになることで得られる特別な時間は、心もカラダも溶かしていくから。 雪夜さんで満たされていく感覚に身を任せたオレは、雪夜さんの背中に沢山の爪痕を残して幸せな夢の中を漂っていったんだ。

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