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第32話

気づいたこと 6 雪夜さんが項垂れて暫くして、会話がなくなってしまったオレと雪夜さんの元にランさんが戻ってきた。 「あら、雪夜が死んでるわ。まぁ、気持ちは分からなくもないけど」 「ランさん、オレ変なこと言いました?雪夜さんに聞いても、全然答えてくれなくて……よく分からないけど、オレが悪いのかな……」 雪夜さんがこうなってしまった原因が、オレには全く分からない。分からないから雪夜さんに聞いたのに、雪夜さんは黙り込んだままなんだ。 だからオレは、会話の流れから深く考えずに思ったことを口にしてしまったオレが悪いのかなって思ってしまうんだけれど……オレの言葉を首を振って否定したランさんは、ただただ笑顔で。 「はい、星ちゃん……いつも頑張ってくれてる星ちゃんに私からご褒美、それはもう星ちゃんの物だから好きに使っていいわ」 そう言われ、オレはやっぱりよく分からないままランさんが差し出してくれた物を受け取ってみることにした。裏返しにされている写真のような1枚を手に取り、オレはソレをそっと表に返していく。 「……誰ですか?この可愛い女の子」 丈の短いセーラー服を着て、両手にポンポンを持って、短い髪を2つに結んでいる中学生くらいの女の子の写真がご褒美ってどういうことなんだろう……そう思ったオレは、とりあえず写真の所有者のランさんに訊ねてみたけれど。 「よーく見てごらんなさい、その可愛い女の子が数年後には星ちゃんの横で項垂れる男に変わるから」 クスクス笑って雪夜さんを見るランさんの視線が問いの答えだと気づいたオレは、今の雪夜さんと写真の中の女の子を交互に見比べて。 「え、えっ!?じゃあ、この子は雪夜さんなの!?」 あまりの衝撃的事実に声が裏返りそうになりながらも、オレは驚きを声に出していた。 今の雪夜さんより、小さくて細くて幼くて可愛い。 セーラー服の丈が合ってないのか、おへそがチラリと見えている女の子……じゃなくて、男の子。 何がどうなって過去の雪夜さんがこんな格好していたのか、理由はチンプンカンプンだけれど。 「可愛い……でも、やっぱりキレイな顔してますね。なんというか、まだ幼そうなのにちょっぴりえっちな感じ」 「それは雪夜が中学生の時の写真よ、体育祭の応援合戦でクラスの女子に無理矢理させられた格好らしいわ」 「そうなんですね。あ、だから雪夜さんはオレに地雷だって言ったんだ……こんなに可愛いのに、雪夜さんにとっては黒歴史ってやつなんですね」 「……学ランも体操着もジャージもパクられたら着る服ねぇーじゃん、保健室の貸し出し分も俺だけ借りれねぇーとか言われるしさ……中学生の頃の俺はさすがにパンツ1枚で全校生徒の前に立つ勇気はなかったんだ。俺はな、嫌われ者だったんだよ……そうだ、きっとそうに違いねぇー」 「何バカ言ってんの、貴方が学校サボってばかりいたからこうなったんでしょう?中学時代、学校行事不参加だった貴方の内申点を一気に潤わせた1枚なんだから感謝なさい」

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