60 / 124

気になる話 12

「…っ、ん」 「星、愛してる」 きっと、オレと雪夜さんの浮気の定義はそのままの意味合いなんだと思う。オレ以外の人に気移りした時点でそれは浮気になってしまうし、もちろん身体の関係を持っても浮気なんだ。 でも、仕事等で他人と2人きりで食事をしたりする場合だってあるのだから、お互いにそこは理解し合って極度の束縛はしていないんだと思う。 浮気について雪夜さんとルールを作ったことはないし、今までオレは浮気なんて考えたことがなかった。他人に目を向ける話をわざわざ2人でしなくても、雪夜さんと一緒に信頼性を築き上げてきたから。 それに、オレの頭の中はいつでも雪夜さんでいっぱいで。他人に目移りしている時間もなければ、そんな感情すら湧かない。 けれど、弘樹と西野君は違うんだって。 そう思うと寂しくて、でも付き合い方ってのは人それぞれだから仕方ないと受け止めるしかなかった。 「これが夫婦の問題だったら、民法上で浮気だと断言できる証拠になるかはかなり微妙なところだ。夫婦の場合、浮気の線引きは肉体関係を持ったかどうかにあんだよ」 「じゃあ、やっぱり大事なのは西野君と弘樹が今後どうするかってことですよね……でも西野君が勝手に弘樹のスマホを見たってことは、この写真を撮られる前から西野君は弘樹のことを信用できてなかったと思うんです」 「疑うことがなけれりゃ、リスク背負ってスマホ見る必要なんてねぇーもん。俺とお前はお互いにスマホ見ることあっけど、それは何一つ隠す必要がねぇーからだし」 アプリゲームをする時や、今みたいにLINEの内容を確認する時。オレと雪夜さんは躊躇うことなくお互いのスマホを見ているけれど。 それができるのは、相手に見られても構わないと思えるからこそで。お互いにスマホを見る目的が、オレと雪夜さんでは西野君と根本から違うんだ。 仕事のこととか友達とのやり取りとかは、親しき仲にも礼儀ありって感じで必要以上に干渉することはないし、勝手に覗き見るなんてこともない。 でも。 オレと雪夜さんがお互いに想いを共有できていることを、こんな形で確認することになってしまったのは正直あんまり嬉しくなくて。 幸せなはずなのに心ここに在らずなオレに、雪夜さんは少しだけ困り顔をしながら口を開く。 「とりあえず、本当に弘樹は身に覚えがないのか確かめる必要はある。西野に嘘つけるほど、あのバカ犬の頭が良くなったとは考えにくいから」 「そうですよね……オレ、明日弘樹に連絡してみます。もしかしたら弘樹も悩んでるかもしれないし、オレも真実を知りたいので」 「西野の話だけじゃ不明点が多過ぎるからな。本人に聞いた方が早いし、お前が変に悩まなくて済む」 オレの数少ない友達が悩んでいる時に、オレだけ幸せを味わっていていいのかなって……そんなことを考えながら、オレは明日の朝仕事に行く前に弘樹に連絡してみようと思ったんだ。

ともだちにシェアしよう!