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気になる話 14
「……だから、弘樹は本当に覚えてないのか聞いてるんだってばっ!」
清々しい朝の目覚め.....には、相応しくない星の声。
俺の名を呼び、おはようございますと挨拶されて迎えるはずの朝はどこにもなく、俺は独り溜め息を吐いて。
ベッドから抜け出そうか、それとも意地で二度寝しようか考えていると、寝室のドアから泣きそうな顔をした星くんがひょっこり現れた。
寝ている俺を起こさぬように、星はリビングで弘樹に連絡を入れたのだろうと。大凡の判断はできたが、おそらく星が泣きそうな理由は別にあるんだろう。
「雪夜さん、助けて……」
俺に気を遣ったのにも関わらず、俺を頼らなければならなくなった星くん。右手に握り締められたスマホの向こうで、俺の可愛い恋人を悩ませたヤツがいる。
「星、おはよ……ってことで、そのスマホ貸せ」
ご機嫌斜めまっしぐらな心をひた隠し、俺は星に微笑んだ後に手渡されたスマホを掴むけれど。
「ったく、バカ犬が」
『白石さん……俺、まだ殺されたくないですッ!!』
……誰がいつ、殺すなんて言ったよ。
どうやら俺の機嫌の悪さは不機嫌を通り越し、弘樹への殺気が混じっていたようで。ベッドで胡座をかいた俺の横にちょこんと座った星も、俺を警戒していた。
星は何も悪くないのだから、星くんを朝からビビらせることはなるべく避けたいのだけれど。スマホ越しにいるクソ野郎に感じる苛立ちはどうすることもできず、俺はとりあえず星の頭を撫でてやりながらバカ犬に話しかけていく。
「俺に殺られたくねぇーなら今すぐ全部吐け、弘樹。星から話は聞いてっけど、どういう経緯で今どうなってるのか説明しやがれ」
『あのッ、話します、話しますケド……俺、本当に覚えてないことの方が多くて』
元気が取得のような男が、電話越しで今にも死にそうな声を出している。己の軽率な行動が原因でどれだけ周りを振り回しているか、それを弘樹は今更ながらに気がついたのだろうと思った。
朝っぱらから星のイタ電で叩き起され、そうかと思えば俺から強制尋問をくらっている弘樹。哀れなバカ犬の声があまりにも弱々しく、こんな野郎にイラついてる俺が馬鹿らしく感じて。
「お前が分かる範囲内で構わねぇーよ。まず、サークルの飲み会ってのはいつ行ったんだ」
漏れていたらしい殺気を消し、星の頭を撫でていた手でその肩を抱き寄せて。弘樹が話しやすいように順を追って問い掛けることを選んだ俺に、星は安堵しているようだった。
『金曜の夜ッス。サッカーのサークルで飲み会があって、先輩から酒勧められて断りきれなくて。1年は俺だけじゃなかったけど、全員飲んでたから』
……場の雰囲気がしらけることを恐れて、やはり弘樹はやむを得ない状況だったワケか。
「お前の記憶が途切れたのは、いつ頃が分かるか?」
『えっと……たぶん、飲んでた酒がビールから日本酒に変わったくらいッス。そこまでなんとなく記憶にあるんですけど、その後の記憶は全く』
「そうか。んじゃ、お前がホテルに拉致られたこともお前自身は知らねぇーんだな」
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