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気になる話 24
それでも、家に帰れば可愛い星くんが俺を待っている。そう思い、車から降りて帰宅した俺は玄関のドアを開け、靴を脱いでいく。
すると、俺のものでも星のものでもない靴が目に止まり、俺はある憶測を立てながらリビングの扉を開ける。
そして。
「……なんで弘樹が家にいんだよ、星」
帰ってきて早々、星くん以外の人間が我が家に足を踏み入れていることに苛立ちを感じた俺は、ソファーで小山座りしている星くんにそう問い掛けた。
「白石さん、お疲れ様ッス」
「雪夜さん、おかえりなさい。あの、今日は弘樹が家に泊まることになりそうですって雪夜さんにLINEで送りましたけど……届いてませんでしたか?」
今日も寝落ちることがなかったらしい星くんは、不安そうに眉を寄せて俺の元までちょこちょこと歩み寄ってくる。
なんとなく、事情はすぐに察したけれど。
仕事のことで頭がいっぱいで、今日はスマホを気にしていなかったことに今更気がついた俺は、内心やらかしたと思うことしかできなかった。
「ごめんな、星くん。今日は忙しくて通知見てる暇なかったんだ、連絡はしてくれたのな」
とりあえず、さっきまでは子供がどうのこうのって思っていた心の内を切り替え、俺は星の頭を撫でていく。
「今日も忙しかったんですね、お疲れ様でした……あ、もしも弘樹が邪魔なら今から帰しますよ?」
「……え、セイちゃん!?」
俺のことを思ってか、いきなりそんなことを言い出した星にラグの上で寛いでいた弘樹は酷く動揺して。
弘樹に対しては相変わらず女王様な星くんの態度に安堵した俺は、自分の考えを落ち着かせるために弘樹を家におくことにした。
「バカ犬、今日はもう遅ぇーし泊まってけ。今日の朝、康介とっ捕まえてある程度の情報仕入れてきたしな」
何度身体を繋げても、授からない生命のことをいつまでも悩み続けている暇は俺にはないらしい。そんなことより、今は星くんの悩みを早く解決してやることの方が大事に思えて。
そう言った俺の言葉に、星と弘樹は嬉しそうに笑っていた。
「白石さんはやっぱ神様ッス!!」
「雪夜さん、ご飯の支度しておくので今のうちに着替えてきてください。みんなで食事しながら、弘樹の浮気について話しましょ?」
「セイちゃーん、俺は浮気したわけじゃないんだけどぉー」
「浮気紛いなことしでかしてくるお前が悪ぃーんだろ、バカ犬。俺が戻ってくるまでに、しっかり反省しとけ」
「そうだよ、弘樹。誰の所為でこんなことになってるのかもう一度よく考えてごらんよ」
「なんか今の言い方、王子そっくり」
「確かに、今のは光に似てたな」
帰ってくる家があって、待っていてくれる人がいて。今日はそこにいらない人間が混じっているけれど、それでもこうして笑える時間があることはありがたいと思う。
悩みは消えないし、本当は星に甘えたいところだが。俺はもう大人だからと、俺は何度もしょげる自分自身に言い聞かせていた。
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