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夢と真実 6

「……この服、弘樹くんからのプレゼントなの。手を繋いでデートしたいからって、弘樹くんが僕にくれた服。ちなみに、これは三着目……青月くん、本当のこと言っていいから今の僕のことどう思う?」 弘樹のセンスは悪くない、というより良過ぎるくらいに西野君の服装は様になっている。ブラックカラーで染められた全身コーデは、一見すると西野君の可愛らしさを控えめにしている感じがするけれど。 淡い色合いや柔らかな素材を避けて女性感を高めていない分、西野君の可愛い部分を最大限に引き立ている甘辛ミックスな女の子の服装。 私服はよく、スポーツカジュアルを好んで着ている弘樹の隣に今の西野君が手を繋いで歩いていたら。男同士のカップルだとは誰も思わないだろうし、まずそんなこと疑いもしないだろう。 「本当に、女の子だって思った……びっくりしたけど、すっごく似合ってると思う」 西野君のことをよく分かっている弘樹が選んだ服だからこそ、西野君がこの服装をしていても違和感を覚えないと思う。 でも、着せられている本人の心は複雑な気持ちを抱えていく一方だとも思った。 「女の子、か……やっぱり、青月くんから見ても今の僕は男には見えないんだね。僕さ、弘樹くんからプレゼントされた服を身に纏う度に、僕は女の子じゃないんだって思い知るの」 オレの真横にいる西野君は見た目が女の子で、でも女の子なのは見た目だけで西野君は西野君で。 「僕は、心まで女の子じゃないのに……格好を変えたって、身体はもちろん、心までは偽れない。弘樹くんは、僕のどんなところが好きなんだろう。どうして、僕だったんだろう」 「西野君……」 「最初は、僕が一方的に弘樹くんのことを好きになったけど。弘樹くんは、本当に僕のことが好きなのか分からなくなっちゃった」 お互いに、惹かれ合うタイミングが一緒だったオレと雪夜さんとは違う弘樹と西野君。西野君の気持ちに弘樹がしっかりと応えることができたのは、高校3年の春。 2人がどのような付き合い方をして、どんなふうに仲を深めていったのか……1番近くで見ていたオレでも、分からないことは沢山あって。 「オレは、オレは弘樹じゃないから弘樹の全ては分からないし、弘樹のことは西野君の方がオレよりよく知ってると思うから、オレは何も言えないけど……西野君は不安、だよね?」 好きかどうか、分からない。 そんな気持ちになってしまうのは、不安を感じるから。オレも少なからず不安を抱えているけれど、西野君と違う点は相手を信じられること。 だからオレは、弘樹のことより西野君の気持ちを確かめてみた。 そして、西野君はオレの問い掛けに反応して、こくんと頷き溜め息を吐く。 「不安だし、弘樹くんのことが信じられないのは確かだよ。僕はね、自分でも知らない間に恋愛対象が男性になってたんだ。だから僕は、女の子に惚れることはないんだけど」 「弘樹は……」

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