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夢と真実 13

呟く言葉をありがたく受け入れ、俺はわしゃわしゃと星の頭を撫でてやる。 少々荒い撫で方だが、髪の上を触るように撫でるよりも、髪を掬って撫でてやる方が星はお好みらしいから。サラサラで艶のある黒髪が、俺に撫でられ無造作になっていくけれど。 「……何も出来ないオレでも、雪夜さんは愛してくれますか?仕事もしなくて、家事もしなくて、ただ雪夜さんの傍にいるだけになったとしても……それでも、雪夜さんは今と同じようにオレを愛せますか?」 もしもの話をし始めた星を、俺は止めることが出来なくて。腕の中にいる星の温もりを感じつつも、俺は返答に頭を悩ませる。 「オレは、雪夜さんが雪夜さんだから好きなんですけど。でも、雪夜さんがもしも料理がすんごい下手で、家事も出来ない人だったら……オレは、それでも雪夜さんのことが好きだって思うんでしょうか?」 俺の返答を待たずに、次から次へと疑問を投げかけてくる星くん。俺がもしも料理が出来ない人間だったなら、星は俺を好きになってなかったのかと……逆に聞き返したくなる気持ちを抑え、俺は星に向かい笑いかける。 「好きになるかどうかは分かんねぇーけどさ、好きになっちまったもんを今更嫌いにはなれねぇーだろ。もしもお前が言う様なことがあったとしても、俺はお前を嫌えない」 星がこの先どうなったとしても、俺は星を嫌うことが出来ないまま星が望んでくれる限り、俺は星を愛していくのだろうから。 星が求めている返答とは異なるかもしれない言葉を告げ、俺は話を西野と弘樹の話題に戻していく。 「光と優だって似たようなもんだろ、アイツらの依存性は半端ねぇーからな。西野も同じなんじゃねぇーのか、嫌な部分も全部含めて許せる相手が弘樹なんだろ」 好き、嫌い。 その2つの感情だけでは語れない相手、嫌いな部分も愛せる相手だからこそ、西野は弘樹と距離を置こうとしている気がしてならないが。 「西野君も、そんなようなこと言ってました。オレ、なんかもうよく分かんないんですけど……雪夜さんは、オレの嫌いなところってありますか?」 ネガティブな思考の中から生み出すトンチンカンな星くんの疑問は、まるで俺を試すようなものばかりで。 「ねぇーけど、強いて言うなら……自分の頑張りを認めてやらないところ、だな。嫌いっつーより、愛おしい部分でもあんだけど」 「なんですか、それ……ぁ、ん…ぅ」 「俺はお前の全てが好きで、お前の存在が愛おしくて堪んねぇーってコト。考えても分かんねぇーなら身体で感じろ、星くん」 仔猫の要望に応え、質問にも解答してやった俺はそろそろ限界だから。赤く染まる愛らしい唇を奪い、問答無用で星をソファーに押し倒した俺はニヤリと頬を緩ませる。 「……オレ、雪夜さんのこういうとこ嫌い、というより愛おしいのかも」 「ちゃんと分かってんじゃねぇーか、なら遠慮なく感じてもらわねぇーとな」 俺を見上げて呟いた星は、俺の首に腕を回して。拒むことなく俺を受け入れようとする星の首筋に顔を埋めたこの時の俺は、珍しく後先考えずに行動出来たような気がした。

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