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夢と真実 14
「んっ、ぁ…」
小さく洩れる吐息も、俺の髪を掴む手も。
全てが愛おしいと思える相手を久々に抱ける喜びを感じつつ、俺は高鳴る鼓動を星に知られぬよう必死だった。
ヤりたい衝動にかられた時、今みたいなこんな時。星の都合なんざ関係なく、手っ取り早く身ぐるみ剥がし、その身体のナカに埋まりたいと思ってしまうから。
俺の勝手な欲求に付き合わせてしまうのは、如何なものかと、受け入れる側の星くんのことを考えてやれと。頭の片隅で、性欲とは無関係な真面目な俺が顔を出す。
「ゆき、や…さ、ん」
少しだけ赤く晴れた目元で、俺を見上げて名を呼ぶ星くん。煽り上手な仔猫の誘いに俺は快く乗ってやり、僅かに開いた唇の隙間へとキスが深まっていった時だった。
スーツの胸ポケットに入れていた俺のスマホが震え、俺の髪から星の手がゆっくりと落ちてしまう。
ラインか、メールか。
急な連絡ではないことを祈りながら、俺は星を愛でる手を止めようとしないけれど。いつまで経っても震えっぱなしのスマホに、先に痺れを切らしたのは星くんで。
「スマホ、鳴って…ます」
……俺より真面目な男が此処にいた、と。
星の理性を完全に崩しきる前に、俺に連絡をよこしたヤツが今の俺の前にいたなら。俺は確実にソイツを殺すだろうけれど、生憎、その相手はスマホの向こうにいるらしい。
仕方なく、本当に仕方なく、胸ポケからスマホを取り出した俺は、万が一のことを考えて仔猫の上に跨った状態のまま星が逃げないように仔猫の額にキスを落とした。
「…もぅ、早く出ないとダメですよ?」
そう思っているのなら、寂しそうな表情で俺を見ないでほしい。次が欲しくて堪らないのは俺だけじゃないのだと安堵したものの、俺はうっとおしく俺を呼び続ける相手を確認した。
上司、兄貴、光……の、3名以外なら俺は出るつもりが全くないのだが。電話に出る様に俺を急かす星の視線が痛くて、俺は深い溜め息を吐く。
電話の相手は、毎回タイミングが悪いバカだったから。わざわざ今出なくても、どうせ俺が出るまでイタ電しまくってくるのだろうと分かっている相手。
頼み事がどうなったのか、知りたいところではあるけれど。星より康介の報告を優先するなんてことは、俺には出来そうになくて。
誰からの呼び出しで、何の用があるのかを気にしている星くんに、俺は電話の相手を誰と告げるべきか考えてしまった。
康介からだと素直に告げれば、星はおそらく弘樹の浮気騒動の真相が気になってセックスどころではなくなってしまう。かと言って、嘘をついて適当な人の名を上げたとしても……星のことだから、折り返し電話をかけろと俺に言ってくるのだろう。
久々に星と繋がり合えるこのチャンスを、無駄にしたくはないんだが。スマホを手に取り、とりあえず相手を確認し、その後バイブ機能からサイレントに切り替えた俺は、俺の真下にいる星を見つめるだけだった。
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